こんにちは食品工場従事者のサカイです。
本日の記事では食品工場で働く上で避けて通れないクレームについて書きます。
サカイは食品工場で15年程働いていますが、食品工場の何が辛いかといえば、クレームです。
一般的に食品工場できついことと言えば、
- ラインでの単純作業が辛い
- クズ上司が横柄で腹が立つ
などが挙げられます。
しかし、食品工場で実際に働いてみればわかりますが、最もきついのはクレームが来た時なのです。
というわけで、今回の記事では
- 食品工場におけるクレームの種類
- クレームが与える現場への影響
について詳しく解説します。
これから食品工場で働こうかなーと考えている方は、実際に食品工場で働き始める前に、今回の記事を読み
「食品工場のリアルな実情」を知って頂けたらなと思います。
食品工場におけるクレームの種類
毛髪の混入
食品工場におけるクレームで最も多いのは毛髪の混入です。厳密にいうと毛髪の付着と混入の2種類があります。
付着:食品の表面上に毛髪が付いていること。付着=ON
混入:食品の中に毛髪が入っていること。混入=IN
付着であれば大抵の場合、検品という作業で取り除かれる可能性が高いです。仮に取り除かれなかったとしても、お客様が喫食する前に発見するケースがあります。
しかし、混入の場合、毛髪が入っていることは当然判断できません。お客様も実際に口の中に入れ咀嚼するまで毛髪の混入には気づけません。
お客様が実際に口の中に入れ何回か咀嚼したのちに
「うん?なんだ?なんか違和感があるなぁ…」
と感じ、口から出すと毛髪だったというパターンです。
お客様の立場を想像すればすぐにわかりますが、付着より混入の方が実際に口に入ってしまう分、罪が重いです。
最悪なパターンとしては毛髪ではなく陰毛が混入していて、お客様の口から出てきた例です。過去に実際にありましたね。
原料由来の異物の混入
毛髪の次に多い異物混入は原料由来の異物です。
例えば、
- 貝→貝殻の破片や海藻
- 魚→骨や寄生虫
- 肉→骨や毛(豚や牛の毛)
- 野菜→虫
などが異物となります。
原料由来の異物は一昔前まで(おおよそ2000年頃まで)は食品工場の責任というよりは、原料の製造メーカーの過失として認識されていました。
しかし、近年では、原料由来の異物であっても、製品に異物が混入していたならば、その責任は食品工場にあると見なされます。
特に骨や貝殻は口の中を傷つけ血が出ることもありますので細心の注意が必要です。
ビニールの混入
ビニールの混入も多いです。原料の多くはビニールに入っています。砂糖、肉、調味料ベース、冷凍野菜などなど、ほとんどの原料はビニールに入っていますので使用時はハサミで開封します。
ハサミで開封する際にビニールの切れ端が出て、それが製品に混入してしまうのです。
なので、ハサミで開封する際は基本的にはチョキチョキと切るのではなく、スーッとハサミを通す(一発切り)ことでビニールの破片が生じないようにするという対策が取られます。
異臭
製品を購入して食べようとしたら
「あれ?腐ってね?」
となるパターンです。
チルド食品を製造する食品工場では、異臭クレームが度々あります。特に夏場は腐りやすいので、気をつけなければすぐに異臭がします。ただ、これは一概に食品工場だけの責任ではないのです。
納品先のスーパーやコンビニや問屋での扱い方によっても品質が悪化する可能性があります。
しかし、クレームの矛先は製造した食品工場に向けられるのが現状です。
製造した製品が腐っている場合は、最悪喫食者が食中毒になってしまう可能性があるので、これはめちゃくちゃ大問題です。
食品工場が一番やってはならないことは食中毒を起こしてしまうことです。
パッケージや容器の破損
製品をパックに入れて、シーラーや真空機を使用し口を閉じるタイプの包装製品(exレトルトのカレー)。このようなタイプの製品では以下の二つのクレームが発生します。
- シール不良
- ピンホール
シール不良とは袋の口の接着した部分が不十分で口が開いてしまう現象です。
お客様の方で事前に気づけばまだセーフですが(いやアウトか…)、袋を湯煎している最中であれば中身が漏れてしまうので最悪です。
ピンホールとは、袋(包装フィルム)が摩擦や衝撃などで針先ほどの小さな穴が開いてしまう現象です。
ピンホールは目視確認できないため、これを防止するには、とにかく丁寧に扱うことが求められます。
丁寧に段ボールに詰め、緩衝材を挟み梱包し、配達の際も衝撃を与えないようにする必要があります。
クレームが起こると大変なワケ
食品工場でクレームが発生すると非常に面倒くさいことになります。
いや、クレームで仮に食品工場の経営が傾いたとしても別に関係ないし
と思うクールな方も中にはいるかもしれません。
特にパート従業員で働いている方は、「どうせボーナス出ないし関係ないっしょ!」と考えるかもしれません。
でも、それ、ちがうのです。
クレームが起こるとそれを防止するための対策が求められます。
- 1時間に一回のローラ掛けを30分に一回にする
- 工場に入室する際は必ず二人一組になりお互いにローラー掛けをして確認する
- 何時何分に誰が誰に対してローラー掛けをしたかを日報に記入する
- 製品を入れるバッドを使用前に殺菌庫に入れる
- 製品を入れる直前にアルコールを噴霧してタオルで拭く
- 加熱後は10分以内に真空冷却にかける
- 冷却後は5分以内に冷蔵庫に入れる
- 何時何分にバッドを殺菌して加熱した製品を何分後に真空冷却機に入れ、何時何分に冷蔵庫に入れたかを日報に記入する
と、今まではしなくても良かった余計な仕事が増えるのです。そして、その余計な仕事をした証拠として日報に記載しなければなりません。
はぁーめんどっち!!
品質管理者が監視してくる
クレームが起こると、食品工場の社員たちはピリピリします。いつもは工場に滅多に入室しない品管の社員が着慣れていない白衣を着用して、ずっと後ろで作業を監視してきたりします。
- 「今アルコールした?」
- 「マスクちゃんと鼻までして」
- 「加熱後の温度ちゃんと測った?」
- 「日報書いてる?」
まるでシュートメのように文句を言ってきます。
特にクレームの原因となった部署には品管者と工場長と社長がピリピリした雰囲気で作業の監視に来たりして…。自ずと作業は遅れます。ってか大人3人がいるとシンプルに邪魔だったりします。
このように、食品工場でクレームが起こると
社員だろうがパートだろうが関係なく、すべての従業員に多大なストレスがかかります。
報告書と謝罪
クレームが発生した場合、食品工場はまず関係各所へ提出する報告書の制作をします。
- なぜクレームが発生したのか?(原因の究明)
- 今後どのような対策を講じるのか?
などを記載します。
異物の現物がある場合は、異物を顕微鏡で撮影し、より具体的な異物の特定をします。
今後どのような対策をするのかを具体的に記載し最後にお詫びの一文を添えます。
次に謝罪です。
謝罪先は主に二つあります。
- 販売会社(BtoB)
- お客様(BtoC)
販売会社への謝罪は、比較的楽です。お互い持ちつ持たれつなところもあるので、よっぽどヒドいクレーム内容ではない限り、スムーズに事が進みます。
問題は、お客様に直接謝罪に行く場合です。いわゆるクレーマー的な人も中には存在します。長々と説教されたり、暴言を吐かれることもあります。
まとめ
というわけで、「食品工場におけるクレームの種類」と「クレームが発生した後に起こる面倒な仕事」について書きました。
食品工場でのクレームの種類は、
異物混入や異臭などの製品の品質不良、ピンホールなどのパッケージの破損が主です。
これらのクレームが発生すると食品工場全体がピリピリします。クレームを再発させないための対策として今まではしなくてもよかった余計な仕事が増えてしまいます。
また報告書の制作や直接謝罪に伺ったりと大変な思いをします。
クレームを無くすために必要なことは、食品工場で働く従業員一人一人の衛生面や毛髪混入に関する意識を常に高く持ち、年上・年下、上司・部下、など立場は関係なく注意し合える環境づくりです。
ドヤ顔で言うのやめて!
今日の記事が、これから食品工場で働こうかなぁと考えている方の参考になれば幸いです。