こんにちは。食品工場従事者のサカイです。
本日の記事では「食品工場で働く前に絶対に知っておきたい知識シリーズ」の第1弾として
歩留まり(ぶどまり)
について詳しく解説します。
どの職種でもいわゆる業界用語というものがあります。
サカイは大学時代、スーパーでアルバイトをしていました。スーパーマーケット業界では「エンド」「定番」「マネキン」など様々な業界用語がありました。
このように、その業界で頻繁に使われる用語は、もちろん食品工場の世界でもたくさんあります。
実際に食品工場で働き始めてから、用語をひとつひとつ覚えていくのもアリだとは思いますが、どうせだったら事前にある程度知っておきたいとは思いませんか?
というわけで、本日の記事では、食品工場で働いていると頻繁に耳にする「歩留まり(ぶどまり)」について詳しく解説します
「歩留まり」とは?
ウィキペディアによると
製造など生産全般において、「原料(素材)の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた製品生産数(量)比率」のことである。
と記載されています。
さすがウィキ先生!その通りでございます。
ねぇーサカイのおじさん。意味が全然分かんないよー
確かに、この文章では意味がよくわかりませんね。
食品工場における「歩留まり」の意味を簡潔に述べると、
原材料を加工した後、どれくらい重量が減ったか(残ったか)
という意味です。
人参で例えると
例えば、10KGの人参(原体)をボイルした場合の歩留まりを考えてみましょう。
人参はまずヘタを切り落とし、皮を剥きます。そしてカットし、10分ボイルしたとします。
そうすると、はじめは10KGあった人参が9KGになっていたとします。
この場合、原体の人参をカットして加熱すると
10Kg→9Kgになった。
1kg減少した。
この現象が
歩留まりです!
そしてどれくらい減少したのかを具体的にパーセンテージで表すことを
歩留まり率
と言います。
歩留まり率の計算方法は
調理後の重量÷原体の重量×100=歩留り率(%)
つまり、上記の人参の場合だと
9kg(ボイル後の人参の重量)÷10kg(人参の原体)×100=90(%)
となります。
なので、原体の人参をボイルした際の歩留まり率は90%となるわけです。
パーセンテージで表す場合は×100をして歩留まり90%としますが、
歩留まり「0.9」でも通じます。実際現場では「0.9」という言い方が多いです。
歩留まり率がわかると超便利
歩留まり率が把握できていれば様々な局面で便利です。
例えば50kgの人参(原体)をボイルしたら何キロになるか知りたい場合、
歩留まり率は90%ですから
50×0、9=45
となり
ボイル後は45KGという答えを導き出せます。
歩留まり率からの逆算方法
ボイルした後の人参が50kg必要なんだけど、人参(原体)は何キロ必要なのかを知りたいという場合、
歩留まり後の重量に歩留まり率を割ってやることで答えが導き出せます。
50÷0.9=55.5
となり55.5kgの人参(原体)が必要だということがわかります。
このように、歩留まり率がわかっていれば逆算することが可能です。これが出来ると、原料の発注の際にとても便利です。
食品工場における歩留まりの注意点
歩留まりは産地や季節によって変化するぞ!
食材を扱う場合、歩留まりが減少する最大の原因は水分量です。肉でも魚介でも野菜でもそうですが、食材には水分が含まれています。
キュウリはほとんどが水分だってママが言ってたよ
そうですね。野菜は特に水分量が多いですね
野菜には収穫の時期があります。収穫されたての野菜は新物として市場に流通します。
新物の特徴は水分量が多いことです。野菜の水分量が多いことは悪いことではありません。むしろ良いことです。
みずみずしくて、新鮮で、色味も鮮やかで、火の通りも良く、料理をする上では良いこと尽くめです。
しかし、食品工場的視点から言わせてもらうと新物は歩留まりが非常に悪いのです。
歩留まりの悪化はコスト高に繋がります。
サカイの経験上新物の野菜は歩留まりが5%~10%程悪くなります。
なので、野菜は常に入荷時に原料を見定め定期的に歩留まりの再計算が必要になります。
また産地によって水分量や食感が違います。
歩留まりとは主に製造業でよく使用される言葉ですが、季節や産地により歩留まりが変化するのは食品工場特有でしょう。
加熱時間に比例して歩留まりは悪くなる
食材を加熱すれば、当然食材から水分がどんどん抜けますので、加熱時間はとても大事になってきます。必要以上にボイルをすれば、歩留まりは悪くなります。
しかし、だからと言って短めにボイルすると、芯まで煮えていなかったり、豚肉の場合ですと生だと食中毒の危険性もはらんできますので、しっかりと加熱しなければなりません。
品質に問題のない時間で尚且つ歩留まりを最低限にとどめる最適な加熱時間を見つけ出す必要があります。
野菜炒めがべちゃべちゃになってしまう原因は、野菜に含まれる水分量が原因です。
シャキシャキの野菜炒めを作るには、
- 事前に野菜を下茹でしたり、
- 高温の油で素揚げしたり(中華料理でよく用いられる調理法です)
- 油を入れないでフライパンで野菜だけを予め炒めザルで水切りする
などの方法があります。いずれも野菜の水分を抜く作業です。
歩留まりをよくするには?
食品工場において
歩留まりが悪い=利益の減少
に直結します。
食材から抜けていく水分はお金と同じです。
故に食品工場では歩留まりをよくするための対策が重要視されます。
可食部を最大限使用する
野菜であれば、
- 皮
- ヘタ
- 硬い芯の部分
などは捨てます。
しかし、これらの部分は可食部と背中合わせです。
- 皮は厚く剥くのではなくなるべく薄く剥く。
- ヘタを切り落とすにしてもヘタや芯その部分のみだけを切り落とす。
些細なことですが、そうすることで、歩留まりは上がります。
まさに、「ちりも積もれば山になる」です。
魚をさばく場合も同様、皮を薄く剝ぎ可食部を多く残します。また、どうしても生じるロスは「あら」として社販にして可能な限り食品ロスを減少させます。
食材の解凍温度の管理
肉や魚介の原材料は冷凍状態のものが多いです。なので使用する際はまずは解凍します。
解凍のやり方次第で歩留まりは良くなります
例えば冷凍の肉の塊(ひとつ7~8kg程度)を解凍する場合は前日の夜に冷凍庫から冷蔵庫に移動します。
ガチガチに凍った肉の塊は冷蔵庫で15時間くらい放置すると、加工しやすい半解凍状態になっています。
このやり方だと、解凍の段階ではまだ歩留まり100%です。
しかし、冷凍の肉の塊を、お湯の中にドボンと入れて溶かした場合は、大量のドリップが肉から流れ出ます。当然、品質も落ちます。
解凍にかかる最適な時間を見つけ出すことでドリップの流出を防ぎ歩留まりと品質を良くすることが出来ます。
そのためには工場内の温度管理や原料ごとの溶けやすさのチェック、またアルミバットかプラスチックバットどちらで溶かすのかなどなど、様々な条件と環境を勘案する必要があります。
まとめ
本日の記事では食品工場における「歩留まり」について書きました。
食品工場における歩留まりとは、食材を加工後(あるいは加熱調理後)に残った量のことです。
「10kgの人参をカットして加熱したら9kgに減ったよー」というのが歩留まりです。
そして、どれくらい減ったのかをパーセンテージで表すことを歩留まり率と言います。
式は
調理後の重量÷原体の重量×100=歩留り率(%)
で導きます。
歩留まりがわかると、原料の必要量が把握できます。原料の発注の際に役立ちます。また原価の計算の際にも必要になりますので食品工場で働く上では絶対に必要な知識です。
歩留まりが悪い=利益の減少に直結しますので、いかに歩留まりを良くするかが大事になります。
また利益面以外の観点から見ても、昨今は食品ロス問題やSDGsが世間的に大きな関心毎となっています。
食品工場における歩留まりの向上は、食品ロス問題やSDGsにダイレクトに関連する事案なので今後「歩留まり」というワードをますます重要性を増すでしょう。
というわけで、最後までお読みいただきありがとうございました。
この記事を最後まで読んだ人の歩留まりはどれくらいかなぁ?